Dear my sweetie. Category:小説昇順 Date:2013年06月20日 この関係をきちんと受け入れるのに時間がかかった理由のひとつに、同性だという点がある。どちらかが言い出したわけでもなく、最初の流れで役割が決まってしまっているが、当然双方とも男相手の経験などなかったので、初めての時は結局最後まではいかなかった。クリスは違和感と羞恥心はあったものの、不思議と始めからレオンの体に対して嫌悪感はなかった。彼の容姿が整っているからかもしれないし、自分の彼に対しての好意からかもしれない。はっきりとした理由はわからないが。レオンのほうはどうなのか、気にはなるが正直に聞くのも抵抗がある。自分のような体躯の男を彼が抱きたがるようには思えなかったし、そう思える自信もなった。ただ、自分よりも積極的にこの行為の意義を追求しようとしているのは確かのようで。「ほら…ここ、わかる?」「っぁ!…っなん、それ、やめ…っ!」レオンの指が、探り出した一点を強弱をつけて弄ると、意思とは関係なくクリスの体が跳ねた。手をつっぱねて声を殺し、未知の快感に翻弄される怖さと羞恥を訴えても、レオンは喜ぶばかりで、許してはくれない。「声、押さえないで…聞かせてくれよ。感じてるクリスは、エロいね」熱に浮かされた低く掠れた声が、聴覚からもクリスを刺激する。体温で暖まったローションの、人工的な甘い匂いと粘着質な水音が立ちこめてますますクリスは羞恥に苛まれる。「これ、良いんだろ。もうこんなに…ほら、わかるか?」「そ、ゆこと、言うの、やめろ、…ァ」「恥ずかしい?…かわいいな」言いながら、言葉ほど余裕のない仕草でレオンはクリスの体をもう片方の手で忙しなく辿り、あちこちに口づけている。初めて体を繋げようとした時、その箇所を時間をかけて解すことを嫌がったクリスに、傷つけないためだと説明して納得させたレオンだったが、今やあきらかに楽しんでじらしている。どうも、男同士のセックスについてどこかで知識をつけてきている気がしてならない。(クリスのほうはと言えば、一応知っておいたほうがいいだろうと調べかけたものの、どうしてもいたたまれず、早々にやめてしまった)一方的に散々喘がされて、涙の滲む目でスキンのパッケージを(ここにきてやっと!)破っているレオンを睨むものの、快感にとろけた瞳でそんなことをしてもますます相手を上機嫌にさせるだけであった。こっち向いてよ、と甘えた声でねだると、背を向けて横になっていたクリスがもぞもぞとこちらへ方向転換した。ほら、と投げ出した腕にしばらく迷った後、しぶしぶといった体で頭を乗せる。セックスでの役割より、終わった後やそれ意外でこういう女に対するような扱いを受けることへのほうが抵抗があるらしい。その気持ちもわからなくもないが、レオンはこの無骨な男を甘やかすのが好きで、今のところそれを止める予定もない。クリスはレオンの腕に収まっても、目も合わせようとしない。怒ったような顔が、ばつが悪く照れているだけだというのもレオンは知っている。その精悍な顔つきは一般的には強面に分類されるであろうが、レオンがその一般的な感覚をとりもどすにはもう遅いようだ。それぐらいハマっている自覚もある。男相手に、こんな風になってしまうなんて、自分でも信じられなかったが、クリスに惹かれて触れたいと思う気持ちを認めてしまってから、こうなるのは自然なことのように思えた。空いてる手をそっと腰に回して、抵抗されないようにゆっくり引き寄せる。やっと懐いた獣を逃がさないようにするみたいに。レオンの体温を感じながら、クリスは深く呼吸をした。けだるい余韻が心地よく、眠ってしまいそうだ。まぶたが重くなっている恋人を、目を細めて見つめるレオンの表情は、クリスが見ればまた恥ずかしがってそっぽを向いてしまいそうなほど甘やかに崩れている。「クリス…もう寝てしまうのか?」腰に置かれた手がだんだんと下へと移動して、クリスの入眠の邪魔をする。「もっとしよう…」「ちょっ…!あ…馬鹿…っ」先程までの名残でぬかるんだままのそこは大した抵抗もなくレオンの侵入を許した。「嫌なのか?…ん?俺とするのは、気持ち良くない?」「あ、…う…っ」少しずつ慣れてきたとはいえ、受け入れるためにできていない場所は狭く、押し付けられたものを圧迫する。小さな入り口に侵入するたび、無理に酷いことをしているようで、どうしようもなくレオンは劣情を煽られた。「あっあっ、そ、そこ、や…っ」覚えたばかりのクリスの良い場所を狙いすまして攻めてやると、逃がすまいとするかのように肉壁がレオンに絡み付いてくる。「なあ…嫌なの…?やめて欲しい?」「駄目、駄目だ…」これをするのが駄目なのか、それとも止めることが駄目なのか。そう訪ねてもう少しいじめたくなったが、本当に拒否されるのも困るのでこれ以上は止めておこう、とレオンが思った時、「…ち、いい」「え…?」「き…もち、ぃい…っ、レオン…っ!」それは駄目だ、クリス、不意打ちだ。「!?あ、あ、あ、待て、レオン、れおんっ」激しく打ち付けられて、もうクリスは揺すぶられるままに喘ぐしかできない。そのだらしなく開いたままの唇をレオンは夢中でむさぼった。いいのかクリス、こんなことを許して。自分が何をされているか、ちゃんと解っているか?俺がお前を甘やかしてるつもりが、お前も大概俺に甘い。クリスの欲望を手のひらで受け止め、自分もクリスの中で薄いゴム越しに吐き出して、2人一緒に束の間の幸福に溺れた。クリスは、照れが邪魔をしてなかなか素直に言えないが、この奇麗な男を甘やかすのが本当は好きだ。こんな大男が自分からして欲しいとねだるなんて死んでもできそうにないが、決して一方的な関係ではないと思っていることが彼に伝わっているといい。レオンは、自分が人に与える印象を心得ているし、自分の容姿が武器になることも、相手が喜ぶ言葉を選ぶ術も知っているが、クリスの事に関してはそんな駆け引きなど絶対にしないと決めている。だからこそ彼への欲求はいつもストレートだ。相手が一人前以上の男であることは知っている。けれど本当は寂しがりな彼が、何も考えずにすねたり甘えたりできる存在でいたい。その、唯一の存在に。(お題:ねだり上手を有効に)